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前にも述べた通り私が半年間住んでいたUpperHuttはウェリントンからローカル線で約40分程行ったところ。実際に利用していた駅はUpperHuttより少し手前にあるSliverstreamという駅だった。銀色の流れというこの駅名もとても好きだった。駅を降りると小さな商店街がある。郵便局やスーパー、ベーカリー、ファーマシー、旅行会社、パブなどとりあえず必要なものは揃っている。ここから緑に囲まれた可愛らしい住宅街を歩くこと30分ほどで私の通っていたPinehaven Schoolが見えてくる。この学校もワンガヌイのAranui Schoolに負けず劣らず緑に囲まれた環境のいい学校。最初の3ヶ月はここから少し駅寄りの丘の上にある家から、そして最後の3ヶ月はこの学校のすぐ目の前にある家にステイしていた。実を言えば最初のお家はお母さんとあまり合わず少々息苦しい生活をしていたのだが移ったお家は本当に居心地がよくまるで本当の家のように過ごさせてもらった。

本当はその家を訪ねようと思っていたのだった。でも勇気が出なかった。お世話になったそのお家の隣にはその家のお父さんJackのお姉さんであるJillの家族が住んでいた。Jillのご主人Johnはイギリスからの移民でそして確か英語を教える学校で働いていた。そんなこともあって本当に私によくしてくれた。飼っていたシェパードを連れて近くのリザーブに朝の散歩に行きよくお喋りをした。ネイティブではない私の英語をきちんと聞いてくれわかりやすい言葉で丁寧に色んなことを説明してくれた。日本に戻ってからも手紙を出すと一番長い返事をくれたのが彼だった。本当であればJohnにもJillにも会いたかった。でも実はNZに着いてから迎えたクリスマスに私は彼らにもクリスマスカードを出していた。返事なんてなかなか来ないもんだなぁと思っていたある日、知らない人からのメールが届いた。タイトルは"John and Jill"だった。そのメールが私に知らせてくれたのはJohnとJillは既に亡くなったということだった。彼らが亡くなった為家が売りに出されそれを買った現在の持ち主がたまたま子供が開けてしまったという私のカードに書かれたメールアドレスに連絡をくれたのだった。まだそれ程年を取っていたわけではない2人がもういない、という知らせは私にはかなり衝撃的で何かが起こったに違いないと考えずにはいられず、かといって考えるのは怖くてそれから数日は呆然として過ごした。結局それ以上はそのメールの主にも尋ねることは出来ずそのままに。そしてその延長線で怖くて本当によくしてくれたJackとお母さんBethにも連絡が取れなかったのだった。初めに受けた衝撃はとっくになくなってはいたけれどやはり今回も入口の奥まったJackとBethの家にも入れなかったのだ。

それでも学校には尋ねてみた。門を入ってすぐあるのがスタッフルームの棟。そこを入るといつもセクレタリーのJulieが笑顔で迎えてくれた。既に彼女はいず変わって迎えてくれたのはおそらく私とあまり変わらない、いやむしろ若いくらいの明るい女性。私が事情を説明するとすぐにスタッフルームに招き入れてくれた。でもね。時が止まったようだったAranui Schoolとは打って変わってこちらはスタッフのほとんどが入れ替わっていた。校長も変わっていた。そして数人顔を見知ったスタッフも私のことはあまり記憶にないようだった。前にも書いたけど授業の途中で数人の生徒達を私のところに寄越してくれていた先生達と実は接することが少なかったのだ。何となく他人行儀で落ち着かない気分になったのを救ってくれたのは初めて会った日本に興味があるという別のスタッフだったのだからなんだかなぁ。でも彼女に本当に救われた。結局何となく落ち着かないまま、お礼を言って帰ろうとすると校長が駅に向かうところで「歩いて帰るのは大変だから乗って行きなさい」と。何となくパワーダウンしていた私はJackとBethを訪れるチャンスをそこに置き去りにしその車に乗って駅に戻ったのだった。

甚だしくパワーはダウンしていたけどこのSilverstreamでもう1箇所どうしても行きたい場所があったのだ。線路を渡って駅の反対側に出た私が向かったのはここ。

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ここがねHutt River Trail。私の散歩道。Hutt River沿いにある遊歩道。よくここを散歩した。更に上流にあるUpperHuttのシティセンターへ3駅分ほど歩いてみたり、途中でブラックベリーを摘んでみたり、時にはベンチに座って本を読んでみたり、TimTamを食べ捲ったり(笑) 最初のお家に居辛くてここで時間を潰したこともあった。その頃と全く変わらない優しさで受け入れてくれた景色を見ながらそんな色々なことを思い出していた。そしてね、復活した(笑)

多分ね、先にここを訪れていたらワンガヌイで学校を訪ねる勇気は失われていたかもしれない。ここで受けた違和感を再度経験するのが怖くて多分AnneにもKarenにも会うことなく帰っていたかも知れない。そう思うとね、うまくいってるんだな。結局この景色は前と変わらずこんなに美しいんだもの。私のベンチは健在だったしね。

そう、ここからHutt Riverの上流側には雪山が見える。その辺りは実はロードオブザリングのロケ地になった場所のひとつなのだ。

ま、そんなこんなで結局会いたい人には会えなかったのだけどやっぱり来てみて良かったんだな。再び電車に乗り40分。LowerHuttを過ぎ視界が拓け海が見えてそしてその先にウェリントンの街並が見えてきた時に心の底からそう思った。それでもやっぱりここは私の人生観を変えた場所だから。

もしもこの先にまたここを訪れるチャンスがあるのなら今度こそ、JackとBethを訪れよう。例え彼らがもうここにいなくても多分大丈夫。ちゃんんとそのことを受け入れられる気がするから。